【おすすめ本22】上橋菜穂子著「精霊の守り人」 書評

おすすめ本

『あちらの世界<ナユグ>から こちらの世界<サグ>を見守る精霊は、100年に一度だけ こちらの世界の人に宿って 新しく誕生するという。精霊が無事に生まれると、そのさき100年は 人の世に大きな災害や飢饉がおきないという。』
(上橋菜穂子著「精霊の守り人」表表紙裏から引用)

 女用心棒のバルサは、事故で川に転落した新ヨゴ皇国の第二皇子チャグムを救う。この偶然の出会いが、全ての始まりとなる。

精霊の卵を守りきれるか?

 舞台は、目に見える人間の世界(サグ)と目に見えない精霊の世界(ナユグ)が重なって存在する世界。

 チャグムは、あちらの世界<ナユグ>の水の精霊ニュンガ・ロ・イム〈水の守り手〉の卵をその身に生み付けられていた。帝国にとって不都合な存在となったチャグムは、実の父親である皇帝から刺客を差し向けられる。

 王妃からチャグムの護衛を依頼されたバルサは、呪術師トロガイと弟子のタンダの力を借り、皇子の命を狙う刺客と精霊の卵を狙う怪物ラルンガ<卵喰い>と戦いながら精霊の卵を孵化させる旅に出る。

情報は散逸し、都合の良いようにねじ曲げられる。

 精霊の卵は100年ごとに生まれるので、「100年前にどうやって解決したか」がわかっていたら何の問題もないはずです。しかし、いざ探そうとした時には断片的で真偽の定かでない情報しか残っていない。1996年に出版された児童文学書ですが、情報化社会の本質に気づかされました。

守り人シリーズの第1巻。

 本著の最後で永遠の別れの時を迎えた筈だったバルサとチャグムですが、実はその後も物語は続きます。巧みな演説で人々を操る政治家、人々に夢を見せる魔物、欺瞞に満ちた世界、・・・。現代社会にも通ずる数々の問題に、バルサとチャグムが真正面から立ち向かっていく。「壮大な物語を読みたい」という方には特におすすめです。

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